「三単現のS」って何?どうして-sを付けないといけないの?
ポイント
この記事は、中学1年生の娘が抱いた英語に関する素朴な疑問に対して答えていきます。英語教師の父としてのプライドを保つことができるでしょうか・・・。
「三単現のs」は中学生が意外に理解していない文法項目の1つ。
高校で英語を教えていても、三単現のSの付け方が身に付いていない生徒も多いですね。
三単現のSの説明は簡単ですが・・・
「なんでSを付けるの??」
そう聞かれるとちょっと返答に困ります。
「そういうもんだから」、「ルールだから」と思っていても、それでは芸がないので、娘が納得してくれる答えを探していきます。
この記事では、「三単現の-S」について、さらには、なぜ「s」を付けるのかを解説します。
三単現の[ s ]とは?
まずは「三単現の s 」について説明していきます。
そもそも、三単現というのは、「三人称」「単数」「現在形」の頭文字を取っています。
ポイント
主語が三人称で、単数(一人、一つ)、現在形のときに、動詞に-sを付ける。
すごいシンプルなルールですが、意外と「三人称」に引っかかる生徒が多いですね。
ここで人称の確認をしておきましょう。
人称 | 単数 | 複数 |
---|---|---|
一人称 | I | we |
二人称 | you | you |
三人称 | I と you 以外 | we と you以外 |
こうしてみるとすごい簡単ですね。
一人称は「話し手」のこと。つまり、I(私)とwe(私たち)の2つ。
二人称は「聞き手」のこと。you(あなた)だけです。
三人称は、I, we, you 以外のすべてになります。it, he, she, that, theyなどの代名詞はもちろん、desk, chair, teacher などの名詞も三人称ですね。
主語が I, we, you以外で単数(一人・一つ)であれば、三人称単数ということだね。
主語が三人称単数で、現在形であれば動詞に「 s 」を付けるのが、「三単現の s 」のルールになります。
ポイント
I love you. ( I は一人称ですね)
We love you.( weは一人称の複数です)
You love me.( youは二人称です)
She loves you.( she は I, we, you 以外で一人だから「三人称単数」ですね)
She loved you.( she は三人称単数だけど、過去形なので s は付かないですね)
ここまでは「三単現の s 」のルールについて解説をしてきました。
人称の理屈を知っていたら、そこまで悩まなくても良いようなシンプルなルールなのですが、本題はここからです。
なぜ、三人称単数で現在形のときには動詞に「 s 」を付けるのでしょうか。
三単現の[ s ] は昔の名残
ではここから本題です。
簡単に言うと、「主語が三人称単数で現在形の時に動詞に[ s ]を付けるのは昔の英語の名残」です。
日本語でも、古文と現代語がかなり違うのと同じように、英語も昔は今の英語とはかなり違うものでした。
今の英語では、三人称単数で現在形のときに「s」を付けるだけですが、昔の英語はもっと複雑に動詞が変化(活用)していました。
昔の英語の動詞の変化(現在形)は次のような感じです。
中英語(10〜15世紀) | 近代英語(初期) 〜1650年頃 | 近代英語(後期) | |
---|---|---|---|
単数・一人称 | -e | ー | ー |
二人称 | -est / -es | -est | ー |
三人称 | -eth / -es | -th / -s | -s |
複数・一から三人称 | -eth / -e / es | ー | ー |
今だと、3人称単数の時だけに「s」を付けるようになっていますが、昔は色々と動詞の語尾が変わっていたんですね。
ちなみに中英語の頃は地域によって形が違っていたようですね。
さて、「なぜ複雑だったものがなくなっていったか」を考えてみると、一番ありそうなのは英語の簡略化でしょう。
イギリスだけで使われていた英語が、世界へと広がって行く中で、新たに英語を使う人にとって便利なように、簡単になっていったと考えるのが妥当かなと考えます。
ここからさらに問題なのは、「なんで三人称・単数の時だけ-s を付けるのか?」ですね。
どうせなら、全部に「s」を付けな言うようにすれば簡単で良かったのに。
この問題に関しては、研究社さんのコラムが大変参考になりました。
このコラムによると、当時(近代英語の後期にかけて)は「 s 」を付けるのは三人称・単数だけではなかったようです。
(1) | My brother watches TV every night. (標準変種) |
(2) | We likes it. / They sees them. (イングランド北部・西部の諸変種) |
(3) | He like her. / That rain a lot there. (イングランド東部のイースト・アングリア変種) |
(4) | There are some parties that goes on over there. / Maybe the governor go to these parents’ homes. (ニューメキシコ州のイスレタ族変種) |
(5) | He have paper indors by You (アメリカ黒人変種) |
(6) | They drink and they makes a lot of noise. (南アフリカ共和国のケープ平地変種) |
こうしてみると結構めちゃめちゃですね。
ところが、このコラムによると、この違いは地域などによるものであって、誤った英文ではなく、全部正解でした。
なぜ(1)が今も生き残ってるかは諸説あると思いますが、個人的には次の説明が一番腑に落ちました。
ロンドンの影響力のある階級の人々が使っていたという社会的な理由により,たまたま件のパラダイムを示していたあの変種が威信を獲得し,人々に広く用いられ,標準変種へ発展していったということです.
Kenkyusha.co.joより
要するに、たまたま社会的に権威ある人が(1)の形(三人称・単数の時だけに「 s 」を付ける)を使っていて、偉い人が使っているからとみんなが真似して標準的なものになった。
まあ、考えてみると日本語も同じ感じの変化が起きてますね。
いろんな方言がある中で、「たまたま東京が首都だったから、標準語が関東の言葉になった」のと同じことなんでしょう。
まとめ
今回は「三単現の s って何?なぜ動詞の後に s を付けるの?」という娘の疑問に答えてみました。
昔の英語は主語によって色々なものを動詞につけてたけど、三人称の s だけ、たまたま残ったんだよ。
ちょっと今回は、難しい話があったりしたので、娘の反応は「ふーん・・・」という感じ。
「たまたま残った」というのもなんかいい加減な感じがするんでしょうね。
でも、言葉は意外とそんなのが多いので、ここらへんは「そんなもんだ」と理解してもらうことにしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。