学習で大切なのは何を使って勉強するか。特に自宅で学習する人にとっては、問題集・参考書選びは大切です。
どんな問題集を買って勉強したら良いの?
本屋さんやネットで見ても、本当にたくさんの教材があり、どれを買ったら良いのか、悩みは尽きません。
現役の英語教師としておすすめを紹介するぞ。
今回は、本格的で超難解の長文読解の問題集『思考訓練の場としての英文解釈』を紹介します。
こんな方におすすめ
- 英語の長文読解力を付けたい
- 簡単なものに飽き飽きして難しいものに挑戦したい
- 偏差値70を超えるような突き抜けた英語力を身に付けたい
[toc]
難関・最難関大学を目指す人や更に高みを目指す人のための、他の参考書とは一線を画した特別な参考書です。この記事では、その魅力をたっぷりとお伝えします。
『思考訓練の場としての英文解釈』は超難関大向けのハイレベル
『思考訓練の場としての英文解釈』というタイトルからしても堅苦しいですね。
この本の書評を引用します。
この本こそ、知る人ぞ知る、名著中の名著であう。インパクトの強烈さは他に類を見ない。現在の私を決定したのはこの書であるといってもいい。少なくとも巻頭言だけは目を通し、大いにうなずくがいい。
ラサール石井選「受験一日一言」より
偏差値90を目指す人の参考書といわれた幻の名著です。
出版は1973年です。私が生まれるよりも古い。練習問題や長文問題もあるものの、使いにくいし、構成も親切ではありません。
正直言って、今の人たちの心にどれくらい響くかは疑問ですが、難関・最難関大を目指す人や飛び抜けた英語力が欲しい人に、一度は取り組んでほしい問題集です。
コミュニケーション重視の現代の英語教育とは相反するが、それを上回る魅力がある。
『思考訓練の場としての英文解釈』の魅力
『思考訓練の場としての英文解釈』の何がすごいのか。一度取り組んで見ないとその魅力は伝わらないかもしれませんが、大きく次の3つを紹介します。
英語学習の目的は論理思考を訓練するため
『思考訓練の場としての英文解釈』における英語学習の目的は論理的思考力を鍛えるためです。
国際社会のグローバル化のために英語を学ぶ訳ではありません。
著者の言葉を借ります。
英語学習を専ら論理思考の訓練の場と割り切って、第一章序文の所で述べたように、日本語とは異なる発想と表現の形態を持つ外国語との接触が我々の条件反射的思考習慣に普段に与えて呉れる衝撃を手掛かりとしつつ、ひたすら「解析的アプローチ」以って対象に迫ること、これが本講の立場である。
理数科目や国語などで営々と培って来た論理考究のmethodが英文解釈の場でふんだんに援用されねばならぬことは勿論である。
思考訓練の場としての英文解釈(1)序より
このコンセプトで好き嫌いがはっきりと分かれそうですね。
曖昧なニュアンス的なものを一切排除して、緻密に英文を解析していく考え方に賛同できる人は多いのではないでしょうか。
当然私もその一人。自信を持って英文を読めるようになった。
もちろん言葉だから、曖昧な部分があるのは確かです。
しかし、その曖昧さを追求していく姿勢は物事を考え抜く思考力につながります。
『思考訓練の場としての英文解釈』に出会う前は、英語を読んでも、なんとなくモヤっとした感じが残っていました。このモヤッとした感覚を残さず突き詰めていくのです。
学習項目が独特
『思考訓練の場としての英文解釈』の学習の項目が独特です。
普通の問題集や参考書は、「不定詞」「関係代名詞」のような文法項目ごとに分けられているか、「文化」「経済」のように長文のテーマごとに分けられています。
ところがこの『思考訓練の場としての英文解釈』の目次は次のようになっています。
『思考訓練の場としての英文解釈』目次
- 第一章 因数分解型STRUCTURE
- 第二章 名詞化表現の解析
- 第三章 対照(CONTRAST)と照応(SEQUENCE)
3部構成の『思考訓練の場としての英文解釈』の第1巻の項目はこの3つだけです。
よく見慣れない言葉ですね。
あくまでも、思考訓練が目的なので、文法項目のような分類はしていません。
ある程度、英語力がある人ならわかる思いますが、この3つのテーマは、英文読解によく出てくる英文構造のパターンです。この3つを徹底的に練習するのが第1巻です。
他の参考書や問題集もこのテーマを扱っていますが、ここまで徹底しているものは他にはありません。
単語や文法は調べたけど何が書いてあるか分からないという経験をしたことがあるはず!
英文構造のパターン使って、思考訓練を積み重ねることで、英文に書いてあることを正確に読み取れるようになります。
簡単な英文であれば辞書と文法書だけで読めます。
しかし、高度な英文になると論理的思考力が必要です。その論理的思考力を鍛えてくれるのが、この本の魅力になります。
著者の語り
『思考訓練の場としての英文解釈』の最大の魅力は、著者の語り口です。
歯に衣を着せぬ言葉を用いて、かなりの毒舌で批判屋です。読んでいて痛快そのもの。気持ち良いです。
少し本文から引用しましょう。特に私が好きな一節です。
全体はcontrolled economy(統制経済)と言う一般用語に集約される点まで立ち入って読み尽くすことが必要で、少なくともこの部分を読んで「統制経済」と言う重要な経済学上の概念がとっさに頭に浮かんでこないような読み方は「英文を読んでいる」ことにはならないのである。この経済学上の概念の少なくとも原始的定義知識や「経済統制」と言う言葉すら知らなかったと言うのでは問題外である。一般常識、高校生として当然備えているべき一般教養の欠如は英文読解の致命傷となるものであって、英語の受験勉強とはたかだか4〜5冊の受験参考書をこなすことであり、そのためには新聞を読んだり色々な本を読んだり考え悩んだりしている暇はないなどと言う衰弱の思想の持ち主こそ受験戦線の落伍者であり、そんな根性で大学へ入ってみたところで仕方がない。「統制経済」という語が頭に浮かべば次に、これを英語で表すにはどうすればよいか、今読んだばかりのcontrolとeconomyを使って書いてみる、英和を引いて確かめてみる、これ位のことはやる必要があるし、特に興味があれば手持ちの本で統制経済のoutlineをつかみ直すとか、それでも満足できなければ図書館に飛んで行ってさらに専門書を紐解くくらいの情熱を持たぬ人は、ただ就職へのパスポートを手に入れたいばっかりに大学進学を目指しているのだと言われても仕方がないであろう。
思考訓練の場としての英文解釈(1)より
まだこれは優しい方です(笑)。
つらつらと書いてある文で、これも好き嫌いがあるかもしれません。しかし、言葉巧みに批判している内容は的を得ています。
優しい言葉で褒めて伸ばすタイプではなく、厳しく諭すような核心をつく言葉です。
ぐさっと来てやる気を無くすか、やる気を出すか。これは読む人次第かもしれません。
問題を説いた後に、このきつい解説を読むのが快感だった。
この問題集は、例えたら劇薬であって、効果がある人にとっては最高の効果を与えてくれます。
最強の英文解釈力を身に付けたいならチャレンジ!
今回は、幻の名問題集である『思考訓練の場としての英文解釈』を紹介しました。
問題が古く、使いづらさはありますが、解説の中身のインパクトは相当なものです。
今読み返してもぐさっと心に訴えます。
これまで100冊以上は長文問題集を使ってきたが、最も印象に残ったものだ!
60 題ある至高の長文問題に挑戦し、最強の英文解釈力を身につけてください。
まずは1巻でその魅力を感じてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。